こんな病気が蔓延するのだけは勘弁してほしい! そんな設定がこの本『パンドラの少女』M.R.ケアリー著 茂木健訳 東京創元社
閉じ込められ、授業に行くときは車いすに拘束されて授業を受けるメラニー。教室にはそんな仲間が22人いる。大好きなジャスティーノ先生はよく本を読んでくれ、メラニーが特に好きなのはギリシア神話だ。反対に厳しいパークス軍曹や、冷たいコールドウェル医師は嫌いだ。外の世界には恐ろしい〈飢えた奴らハングリーズ〉と、廃墟を漁る廃品漁りの危険なグループがいるという。この〈飢えた奴ら〉はゾンビのようだが、ズバリ疫病の感染者なのだ。。キノコの一種が人間に寄生、脳を破壊して人格を乗っ取り、他の人間を襲って感染させ仲間を増やす。知性を失い、獲物(人間)が来た時以外は全く動かないが、いったん見つければ素早く襲ってくる。
ところがちょっとしたトラブルからメラニーたちのいた基地が襲われた。廃品漁りたちが、飢えた奴らを操って襲撃をかけたのだ。パークス軍曹と部下のギャラガー、メラニーとジャスティーノ先生、コールドウェル医師だけがなんとか脱出を成功させるが、その過程でメラニーは自分が飢えた奴らの一員であることに気づく。いつもは薬品で体臭を消している人間の匂いを嗅いだら、理性が飛んで大好きなジャスティーノ先生だって襲ってしまいかねないのが自分の正体なのだ。一方、コールドウェル医師は、メラニーのような知性のある子どもたちの秘密を解明しようとしていた。なぜ、メラニーたちは自由に動き、学べば言葉も知識も習得できるのか? この謎を解けば治療につながるかもしれない。メラニーを守ろうとするジャスティーノ。冷静な判断で全員を守ろうとする有能なパークス軍曹は、自分の危険を自覚して、あえて拘束を選ぶメラニーの態度にしだいに敬服するようになる。生き残りの本拠地のビーコンを目指そうとするのだが、次々にトラブルがふりかかる。いわゆる人類終末ものだが、途中のドキドキ、合理的ななぞ解き、さらに感染症克服(!?)としては意外すぎるラストの展開がすごすぎます。最後まで目がはなせません。