“感染経路”だの“クラスター(感染集団)”という言葉を毎日聞きますが、伝染病が発生した時に、どう対応すればよいのかが明らかになったのは意外と最近のこと。
『ブロード街の12日間』デボラ・ポプキンソン作 千葉茂樹訳 あすなろ書房 で、その歴史を振り返ってみましょう。
主人公のイールは10歳。運が良く川の泥さらいから、ビール醸造所の下働きの仕事を手に入れたのに、醸造所の甥にはめられて盗みの嫌疑をかけられてしまう。だが、イールの所持金は、近所の仕立て屋や医師ジョン・スノウ博士を手伝って得たお駄賃だ。証明してもらおうと仕立て屋さんのもとに行ったイールは、仕立て屋が“青い恐怖(ペスト)”にかかったことを知る。スノウ博士に治療を頼みに行くと、博士は治療は不可能だが、これ以上病気を広めないためにできることがある、それを手伝ってほしいとイールに頼む。かつては両親いて教育も受けられたのに、父の死から転落が始まり、残酷な義父と再婚した母も死んだ。たった一人の弟を守るために義父から逃げて稼いでいたのに、その全てが崩れるかもしれない。井戸が原因と考えるスノウ博士の仮説を証明するため井戸の使用停止を行うため、イールは動く。友人のフローラの助けを借り、懸命に調査をするイールに、義父の魔の手が伸びる。1854年に行われた初の疫学調査の史実に架空の少年を加え、当時のロンドンのようすや、懸命に弟を守るサスペンスで盛り上げる。中学生位からよめるお薦め。