マークス・ズーサック著 入江真佐子訳  早川書房 2007.7 978-4-15-208835-2

作者はドイツ系オーストラリア移民。舞台は第二次世界大戦ごろのドイツで語り手は死神だ。

リーゼルは、養女としてやさしい父さんと、口が悪く乱暴だが善良な母さんにひきとられる。養父母への旅の途中で弟は死に、墓掘り人が落とした『墓堀り人の手引書』を盗んだのが彼女の本泥棒の始まりとなった。近所の悪餓鬼ルディや影の薄い町長夫人との間で成立する本を盗む友情。地下室に匿うユダヤの青年マックスと、彼が作ってくれた本。爆撃の防空壕の中で本を朗読した時に広がる安らぎは、リーゼルに言葉の力を教えてくれる。空襲で身近な人を全て失う悲哀の後、町長夫人の友情と収容所から生還したマックスとの再会が救い。登場人物の個性が活き活きと描かれ、悲惨な題材を抑制をきかせて描くことで成功している。