綿矢りさ著 新潮社 9784103326236
京都を舞台とした「細雪」健全版という雰囲気の物語。おっとりした長女綾香は、31歳の図書館員。27歳で別れて以来彼氏なしだが、最近子どもの声をきくと、子どもが欲しい、結婚したいという思いがわいてきてちょっと切ない。次女の羽依は、強気で派手な会社員。先輩女子のいびりや、もてると調子に乗っている男前原に怒り、ブチ切れて反撃もしてみせる。三女凛は、理系の大学院生。化粧っ気もなく、研究や友達づきあいを楽しんでいる。ちょっと影の薄い、やさしいお父さんと、定年宣言をして遊びまわるお母さんは、京都っ子。京都という独特な土地の中で、凛は、その地が好きだからこそ外へ出たいと、東京の会社への就職を志望する。羽依の会社での、自分の立ち位置獲得のためのバトル。羽依から紹介された会社の40歳と綾香の、地味なおつきあいの中での揺れ動く思い。京都に思いを込めながら羽ばたく凛と、家を出ようとする娘に激しく動揺する両親。どことなくありそうな家族を、京都という土地を背景とすることで、過去からの歴史やつながりを感じさせて描いている。はんなりと読める感じがとてもいい。あぁ、でも次女羽依が図書館員の設定になったら、どんな図書館運営するかも見たいです。