アン・ウォームズリー著 紀伊国屋書店

 

 

 

 

犯罪被害にあった過去を持つ著者は、行動的な友人キャロルの強い勧めに動かされて、恐怖感を抑えながら刑務所の読書会ボランティアを始める。思いがけないほど深く物語を読んだり、全く違う視点を与えてくれる読書会のメンバーたちと付き合う中で、犯罪者たちも一人の人間であり、何とか立ち直ろうとしていること、そして人が読書によって変わっていく様子がなんとも魅力的に描かれている。「その場しのぎの、ただおもしろいだけも小説にはもう興味がない。著者がなにを考えてるか、どんな言葉を使ってるか、どんな語り口で表現してるかを知りたいんだ。」と受刑者が語る場面、また単調な毎日の中で読書が救いとなり、読書会という場が人種やグループの違いを越えた意見交流の場として彼らの楽しみとなっていく様子は印象深い。最後に読書会メンバーのその後が語られる。犯罪から無事に立ち直れた者だけでなく、結局新たな罪を犯して刑務所に戻っていくものも残念ながら出るようすはつらい。ここで語られた本が読みたくなってくる本。