だれでも読書会
〇日時2024.6.12(水)10:15~12:00 *開場10:00
〇場所 浦安市立中央図書館1F 
〇参加 5名

当日紹介された本
『不機嫌な作詞家 阿久悠日記を読む』三田完著 文藝春秋 2016.7 阿久悠の評伝。他に評伝がない。阿久悠自体は面白い人で、彼の出身大学である明治大学に記念館がある。本人の自筆原稿などとても面白い。阿久悠は淡路島洲本高校出身。ドラゴンクエストシリーズをつくった堀井雄二氏もここ出身だが、二人とも、どこか鬱々として暗い雰囲気の共通点がある。→記念館の見学をしても面白いかもという話題となる。

『白鳥とコウモリ』東野圭吾著 幻冬舎 2021.4 次の目標はこれを越える作品と著者がいっていたというだけあって、面白かった。タイトルの意味についてはたった一行しかでてこないけれど光と陰をあらわしているようだった。内容は重い部分もあるけれど相手を思いやるところがあっていい。

『キネマの神様』原田マハ著 文芸春秋 2008.12 映画にかかわっている身内がいるので興味をもった。映画も観たが、当初志村けんを主役にする予定というのが実現したほうが主人公にはぴったりだと思った。描写が絵になって浮かぶのは、画家をテーマにした作品が多い著者なので、絵画的なイメージが豊かなのかと感じた。

『レーエンデ国物語』多崎礼著 講談社 2023.6
 満月の夜に現れて銀の呪いをふりまく幻の海のため、死に至る銀呪病があり、人が入らないレーエンデ。戦争の英雄ヘクトルは、娘ユリアを連れて、太古の森にルートを探すためにここを訪れる。道案内トリスタンとユリアの間には次第に気持ちが通っていくが、トリスタンには秘密があった。そしてさまざまな国の思惑がからみあう中で、歴史が動いていく、というファンタジー。壮大だけど文体はラノベ風で、1巻目を読んだ後、次をどうしようかと思ったが、2巻目は、ガラリと革命譚となりおもしろかった。

『極楽征夷大将軍』垣根涼介著 文藝春秋 2023.5
 同時の直木賞(「木挽町のあだ討ち」永井紗弥子 新潮社)と読み比べたが、こちらがとても面白かった。足利尊氏や南北朝時代の事はよく知らなかったので、こんな感じだったのか! と知ることができたのも良かった。

『人生のマイルストーン』中嶋照夫著 幻冬舎メエィアコンサルティング 2024.2
 実話を元にした本。70歳でリタイアした後に、アメリカ横断旅行をキャンピングカーで行くことを企画。仲間を募集する。条件は協調性があること、ペアであること、好奇心があること、できればお酒が飲めること。出発前に2年かけてミーティングをして男5人、女4人の9人。キャンピングカー2台で出発。自分は、あまり条件にあてはまらないから無理だと思いつつ面白く読んだ。

『ルイジンニョ少年 ブラジルをたずねて』かどのえいこ文 ポプラ社 2019
 角野瑛子さんの「魔法の文学館」を訪問し、彼女に興味を持って、デビュー作だというので読んでみた。好奇心をもった生き方がすごいと思った。

『世界は五反田から始まった』星野博美著 ゲンロン 2022.7
 自分が生まれた五反田の家族史が、軍国主義日本の歩みと直結していくことを発見していく。小林多喜二や宮本百合子も暮らしたり取材に訪れた労働者の街。城南空襲を受けた時に、その前の3.10の教訓が活かされ、逃げたことで大勢の命が助かるという庶民の知恵や、焼け跡にまず杭を打つガッツ。敗戦が決まらないうちから、何があっても、前を向いて進んだ著者の祖父が迫力あった。

『アリアドネの声』井上真偽著 幻冬舎 2023.6見えない、聞こえない、話せない」中川博美が、大地震で地下5階に閉じ込められ、通路がふさがれているため、ドローンで救出を試みる、といういかにも現代の物語。地下で一人孤立した博美の冷静さにみんなが驚いているとき、「いつもと同じだから」と解説する介助者の言葉が重い。ラストの意外性も魅力。