ここまでできる! デジタル化が進む図書館の使い方講座報告
〇講師:岡本 明氏(㈱寿限無 代表取締役)
〇日時:2023.7.27(木)10:15~12:00
〇場所:浦安市立中央図書館2F 視聴覚室 〇参加者:22名
[内容要旨]
日中国交正常化で、中国で仕事をしていた講師は、天安門事件をきっかけに帰国。当時科学繊維メーカに勤務していたが、新規事業である「PCを使った静止画像ファイリングシステム」の開発・販売にかかわることになった。
1990年国立国会図書館のプロジェクト(電子図書館実証実験プロジェクト)に於いて画像フォーマット、光メディアのコンサルテーション業務を行うとともに、本プロジェクトの実験データとして、出版界より約3200万ページのコンテンツ収集及びこれらコンテンツのデジタル化を行い、本プロジェクトに大いに貢献。コンテンツを提供した一部出版社は、このプロジェクトで作成したデジタルコンテンツを利用しCD-ROM出版を行い、当時話題になった。この後、現在のさまざまな電子化までには、約30年にわたる技術の進化の歴史があった。
1994年にはスキャナドライバの開発では定評のあるアメリカのメーカーのスキャナドライバを、日本の各スキャナメーカーに販売/するとともに、本ドライバのサポート業務を担うことになる。2002年にはJPEG(Joint Photographic ExpertsGroupの頭文字。コンピュータで扱われる静止画像のデジタルデータ圧縮技術)のアーカイブ用フォーマットJPEG 2000の基礎開発を開始。2004年には国立国会図書館のデジタル化がフルカラーとなり、2012年に震災のあとの雇用促進で、国立国会図書館の資料をデジタル化するための予算として、127億円の予算が同館につき、これが日本でのデジタル化の突破口となったといっても過言ではない。
電子書籍とは、紙の本の媒体が紙であるのに対し、情報が電子モニターで表示されているもの。極端にいえば、タブレットやスマホそのものが電子書籍であるといえる。
新聞・テレビはオールドメディアと言われるようになっているが、紙から電子に媒体が変わったことで、双方向性が生まれ利便性が高くなった言えるだろう。また、インターネットやスマートフォンの普及で、個人でも簡単に情報発信が行なえるようになったことは、デジタルデータがより身近なものになったことの証といえるだろう。(情報発信元のデータは、テキストであれ、音声・映像であれ、全てデジタルデータである)
電子書籍の利便性としては、書店や図書館に行かないくても本が入手できることだが、アマゾンでは、現在アメリカで書店を開店して揺り戻しをおこなっている。また、小さな子どもには、やはり紙の本を読ませたいなどというのもある。
実際に電子書籍を入手する代表的なサイトとしては
- amazon:最初は紙の書籍の宅配から始めている。
- 楽天kobo:amazon の手法を真似している。楽天ポイントで購入できるので、それでここを使う人がいる。
- booklive:マンガの一番大手。若い人が良く見ている。
- ebook Japan:マンガを最初に始めたところ。内容は二流が多いが、無料作品が多い。
- honto:丸善とジュンク堂という書店が始めたサービス。書評をきちんと載せている。選ぶ時の参考にするには、ここのサイトが安心など色々ある。
日本の公共図書館で利用できる電子書籍としては一番多いのはLibrary&TRC―DLだが全体の7%程度。内容は実用書などで、住民全体に役に立つものかは判断が難しい。図書館で利用できる電子書籍全体でも、新刊が少ない、タイトル数が少ない、予算がない、会計基準がない、紙の本よりも高価など、導入にはまだまだ問題があり、アメリカの図書館では9割が電子書籍を扱っている状況とは差がある。
これに対し、国立国会図書館(NDL)デジタルコレクションのうち、NDL館外から利用できる資料数は約242万タイトルもあり、無料で利用できる。著作権が消滅していて、一般に公開されている資料以外に、著作権が消滅していない資料も、NDLの個人送信に申請することで閲覧ができる様になっているので、ぜひ個人送信の申請をしてみてはいかがかと思います。
デジタルアーカイブシステム構築については、公文書館を中心に、公共図書館・美術館などを対象にして業務を行ってきた。
現在、自分たちの地域資料をデジタル化し、発信(インターネットを利用した情報提供)したいというニーズが増えている。これは、コロナ下で、通学ができなくなり、小学生からタブレット端末が配られたこととも関係していて、これらデジタル化された地域資料は、教材としても役立っている。所蔵するだけではなく公開する流れができているので、利用していきたい。