本屋さんに聞いてみよう! 報告
【特別ゲスト】有隣堂アトレ新浦安店店長 足立尚子さん
有隣堂エリアマネジメント課 神谷康江さん
〇日時:2022年10月27日(木)
10:15~12:00
〇場所:浦安市立中央図書館2階
視聴覚室
〇参加者:31名
[当日のようす]
・おニ人のキャリアと現在の業務内容をご紹介ください。
足立さんは新卒で有隣堂に入社、いろいろな店や担当、本社勤務なども経験。アトレ新浦安店に配属されたのは、この9月から。神谷さんは、銀行勤務を経験後に有隣堂に入社という、ちょっと異色の経歴の持ち主。やはり、さまざまな担当を経て、現在本社勤務。エリアマネジメント課は、新設されたばかりの部署。千葉を含む全店を担当している。
・有隣堂の歴史と事業について
1909(明治42)年開業した小さなお店が原点。1989年には東京圏に進出。東戸塚に本社を完成させる。2010年以降はコラボカフェなども手掛け、2018年に日比谷セントラルマーケットに出店し、居酒屋、アパレル、理容などバラエティーに富んだ店舗になっている。さらに、2019年には台湾の複合型書店「誠品生活」の日本一号店「誠品生活日本橋店」をコレド室町テラスに出店した。
・浦安のジャンル別ベストセラーとその特徴を教えて下さい
大きくは、全店のベストセラーとは変わらない。店独自のベストセラーの例としては、9月に仕掛けた『ココ・シャネルの言葉』山口路子著(大和書房)2017が2位、 「今宵も喫茶ドードーのキッチンで。」標野凪著(双葉社)2022が9位に入った。これはここのみ。
・仕掛けるとは? そして浦安の特徴とは?
1カ所だけではなく、何箇所も置き、特に目につきやすい場所に配置すること。新浦安のお客様は、女性も多く、ちょっとオシャレなものが好まれる傾向がある。
似たような立地でも、地域によって本の売れ方が違うが、これは、言葉ではうまく説明できない。
・売上データはどう確認?
レジで売れた瞬間にデータが飛ぶ仕組みになっている。芥川賞受賞など、大きく動く場合は2時間ぐらいで様子を確認するが、普通は翌日確認。棚に1冊の本は、0冊になった時点で自動的に発注が飛ぶ。これが重なって1週間、1カ月の売り上げとなる。売れ行きがさがっていれば仕入れを減らし、上がっていれば増やしている。
・書店員の一日の業務の流れについて
早番で最も早いシフトのスタッフは朝8時30分に出勤。本の納品は早朝と午後イチの1日2回ある。
朝届くのは特に雑誌やコミックで、雑誌は本体と付録が別々になっているので、それを合わせて紐かけをしたり、コミックにビニールカバーをかけて、開店までに必ず間に合うようにする。それ以外の本は、そのあとも随時出していく。昼に届く荷物は雑誌以外の新刊で、検品をしたうえで夕方17時までには出す。17時以降はレジが混雑するので、レジと接客中心になる。
・膨大な新刊を配置する方法とコツを教えて下さい・売れる本を一瞬で選ぶ方法とは
本が入ってきた時点で、有隣堂独自の6桁の分類がついているので、それを元に分けて配架する。出版社が売って欲しい本や、売れると見込みをつけてきた本は、平積みにしたり、いい場所に置く。その後、売れ方をみながら、店独自に判断していく。
時々、振られている分類が内容と合わないことがある例えば『今さら聞けないお金の超基本』朝日新聞社編(朝日新聞出版)2018は、金融・投資の分類がついて入荷したが、その分類では全く売れなかった。そもそもこの本は中身が家計のやりくりの本であったため、それに気が付いたスタッフが、家政の棚に変えると急に売れ始めた。あらかじめ分類がついていることでスピードアップになっているが、修正が必要な時もある。
・読みが当たった経験と外れた経験を教えて下さい
出版社が売れると思って多く送ってきたものが売れるのは自分のヨミとはいえない。担当者が5冊、7冊と掘り起こしてコツコツ売っていくなかで売れていく例もある。
自分の知っている売れた例 『仙郷異聞』平田実篤著(岩波文庫)2000年。難解な本だが、中身は天狗に攫われた子どもの体験という面白い。ポップをたてたところ、Twitterで紹介する人もいて評判になった。また『清少納言を求めてフィンランドから京都へ』ミア・カンキマキ著 末延弘子訳(草思社)2021も、清少納言にはまったフィンランドの女性が、特に研究者でもないのに、日本に来てその世界に浸るという内容で、地味に売り上げを伸ばして200冊位売れている
[会場からの質問]
・検索が新しくなったが使いにくい、元には戻せないか?
→今年の6月から8月にかけて本社システムが変わり、それに伴っての変更。慣れないこともあり、社員も使いにくいと感じていている。ご不便をおかけして申し訳ない。現在改修を重ねておりかつてない機能に完成させることをめざしている。
・文房具売り場が広がったが
現在の売り上げは文房具が2割。だが、文房具は利幅が大きいので利益を出してくれている。特に新浦安店の特徴としては、紙物と言われる便箋・封筒、今ならカレンダーや手帳が売れている。これも地域性があって、この地域は手紙を書かれる高齢の方が多いのかもしれない。
・店頭の本の売れ方を見ていて、世の中がわかるか?
その時々ではわからないが、あとからデータ分析をして、今年はこんな年だったとわかることはある。
たとえばコロナになってから、参考書だけでなく、自宅学習用のドリルが良く売れて、出版社もそれに気が付いて関連書が多く出版された。また、最近はお金関連の本が良く売れている。これも、収入が不安定になり不安な気持ちになったいる方が多いせいではないかと推測する。いすれもあとから振り返ってそうか、と思うので、未来は予言できない。
・本屋大賞には、実際の書店員さんはどうかかわっているのか?
あれは、あくまでも書店員が個人でかかわる賞。社としてかかわったり、指示が出たりしていない。自分たちは参加していないが、個人で参加している店員は有隣堂にもいる。参加するには、最初の1冊は好きな本を推薦できるが、そのあとは絞られた候補作を全点読まなければならないので、なかなか大変である。
[会場参加者からのエール]
・書店が無くなるのはとても悲しい。かつて、モナの三省堂がなくなってとても悲しかった。有隣堂は頑張って市民を悲しませないで欲しい。
・図書館で借りる本と、買う本がある。今日の話をきいて、自分は有隣堂に仕掛けられにいっているのだと思った。『ココ・シャネルの言葉』も買ったし、よく便箋を買っている。行けばなにか提供してもらえるのを楽しみにしている。